タイヤの性能を引き出すには、空気圧管理が重要だ。
タイヤの空気圧は、体重や路面コンディション、タイヤの太さなどさまざまな要因によって変わりうるが、高すぎても低すぎても良くない。本記事ではタイヤの空気圧の重要性や高圧、低圧の違い、さらに最適な空気圧の見つけ方をご紹介する。
タイヤの空気圧が走りに及ぼす影響とは?
タイヤの空気圧は、タイヤの側面などに記されている推奨空気圧の範囲で使うことが大前提だ。
推奨空気圧とは、そのタイヤを安全に使うことができる空気圧の範囲を示している。推奨空気圧に幅があるのは、ライダーの体重や路面コンディション、天候などさまざまな要因でライダーごとのベストの空気圧である適正空気圧が変わってくるからだ。
タイヤは、適正空気圧で乗車した時が乗り心地、グリップ、転がり抵抗のトータルバランスが最大になる。したがって、自分にとっての適正空気圧を知ることは非常に重要だ。
とはいえ、適正空気圧はあくまで基本的なセッティングでしかない。ライド時のコンディションによっては、同じライダーが同じバイクに乗るとしても、適正空気圧から少し低めにしたり、少し高めにすることでよりコースやコンディションにあった乗り味に調整することができるのだ。
適正空気圧から低めの場合
【メリット】
・乗り心地やグリップ力の向上
【デメリット】
・コーナーでの不安定さ
・リム打ちパンクのリスクが増す
・転がり抵抗が減る
適正空気圧から高めの場合
【メリット】
・パンクのリスクが減る
【デメリット】
・コーナーでの不安定さ
空気圧が「高すぎる」場合に走りの軽さが損なわれたり転がり抵抗が増えることは少しイメージしにくいかもしれない。
凹凸がまったくない路面では、空気圧が高い方が転がり抵抗が少なくなるのは間違いないのだが、現実の路面では綺麗なアスファルトであってもいくらか凹凸がある。空気圧が高すぎると路面の凹凸によってタイヤが弾んでしまい、走行抵抗が増えてしまうのだ。
路面が荒れているほど、より低い空気圧でないとタイヤが弾んでしまうため、きれいな路面より空気圧を低めにしないと転がり抵抗は増えてしまう。
現実の路面では、空気圧が高ければ高いほど転がり抵抗が少なくなるということはあり得ない。体重も路面状況も度外視して「とりあえず指定空気圧の上限まで空気を入れておけばよい」と考えているなら認識を改めよう。
タイヤの空気圧に影響を与える要素
では、適正空気圧はどのように求めれば良いのだろうか?そのためにはまず、タイヤの空気圧に影響を与える要素を知っておく必要がある。
まず大前提として挙げられるのが、タイヤの種類だ。同じサイズのタイヤであっても、ブランドやモデルが違えば対応空気圧は異なる場合もある。使用するタイヤの指定空気圧の範囲内で、空気圧を調整するのが基本だ。
その上で、適正空気圧を左右する条件を挙げていく。
【ライダーの体重、バイクや荷物などを含めた総重量】
ライダーの体重が重いほど適正空気圧は高くなる。
また、バイクなどの総重量も、タイヤの空気圧に影響を与える要素だ。例えばツーリングなどで荷物を満載にして走る場合と、荷物を持たずに身軽な状態で走る場合とでは、前者の方が空気圧を高めにセッティングする必要がある。
【路面コンディション】
綺麗に整備された舗装路ではやや高めでも良いが、荒れた路面では低くするのがセオリーだ。
【天候】
ドライコンディションで雨が降る心配がない場合は、状況によって少し高めにしても良いだろう。雨が降っていて路面が濡れている場合や、雨が今にも降りそうな場合は、グリップ重視で低めにすると安心だ。特に雨は降り始めのころが滑りやすいので気をつけよう。
【タイヤの太さ】
一般的に太めのタイヤほど指定空気圧は低めになるので、タイヤを太くした場合は適正空気圧もやや低め、細くした場合はやや高めになる。
【ホイールのリム幅】
最近はワイドリムのホイールが増えている。一般的にリムの内幅(リムの左右のビードフックの内側の幅)が広いホイールは指定空気圧が低くなる傾向にある。
【チューブレスかクリンチャーか】
クリンチャータイヤは、チューブレスタイヤやチューブレスレディ(TLR)タイヤよりも指定空気圧が高いことが多い。
クリンチャータイヤは低圧で運用するとインナーチューブが地面とタイヤの間にはさまれて傷つく「リム打ちパンク」のリスクがあるためだ。
チューブレスタイヤやチューブレスレディ(TLR)タイヤはクリンチャータイヤより空気圧を低めに設定できるだけでなく、しかも低めの空気圧でも転がり抵抗が低く保たれるため、乗り心地の良さと転がりの軽さを高いレベルで両立しやすい。これはチューブレスタイヤやチューブレスレディ(TLR)タイヤのメリットのひとつだ。
【ライダーの好み】
乗り心地を重視するか、軽快な走りを重視するかはライダーの好みによるところもある。ある2人のサイクリストが同じ体重だからといって、同じ空気圧が適正とは限らない。
【走行距離や走り方】
長時間走り続け、さまざまな状況の路面を走りうるロングライドでは、一般的に快適性を重視して空気圧をやや低めにすることが多い。1時間〜1時間半程度で終わるヒルクライムレースなら、転がり抵抗を減らすことを重視してやや高めの空気圧で挑む方が結果につながるだろう。
適正空気圧の求め方
適正空気圧は一概に「体重何キロであればどのぐらい」とは示しにくい。前述した通り、タイヤによってはパッケージに体重別の適正空気圧が示されていることもあるので、それを目安にするのが良いだろう。
では、タイヤにそのようなデータがない場合はどうすれば良いのだろうか?そのようなケースでは、自分で自分にとっての適正空気圧が分かるまでトライアンドエラーを繰り返すしかない。その方法の一例を紹介する。
STEP1
タイヤの指定空気圧の範囲内で、過去に使っていたタイヤと同じ空気圧で空気を入れてみる。分からない場合は700C×25mmのクリンチャータイヤ、ドライコンディションの場合、体重60kgで6.5気圧(約95psi)ぐらいを目安にしよう。体重が重い(70kg前後)場合は7気圧ぐらい、軽い場合(50kg前後)は6気圧スタートでも良い。
STEP2
その空気圧で乗ってみた後、少しずつ(目安として0.2気圧(約2psi))空気圧を下げて、また試乗してみる。乗り心地の変化(衝撃吸収性、コーナーでタイヤがよじれる感じ)、転がりの軽さの変化をチェック。乗り心地が硬いと思ったら空気圧を少し下げ、転がりが重すぎると感じたら空気圧を少し上げる。
STEP3
2の作業を繰り返し、乗り味が硬すぎず、転がりも重くない空気圧が、そのタイヤでの自分にとっての適正空気圧と考えられる。ウェットコンディションの場合や荒れた路面を走る場合は、タイヤの指定空気圧の範囲内で空気圧を少し下げると良い。
なお、タイヤがより太いものや細いものの場合や、チューブレスタイヤやチューブレス/チューブレスレディ(TLR)タイヤでも基本的には同じ方法で自分にとっての適正空気圧を調べればよい。ただし、タイヤが28mm幅以上のように太い場合はチェックスタート時の空気圧はより低め、23mm幅以下のように細い場合はより高めにするとよい。
適正空気圧で気持ちよく走ろう
ライド前に毎回タイヤの空気圧を調整することは、安全に走るためにも、自身のパフォーマンスを最大限発揮するためにも、バイクの本来の性能を引き出すためにも、様々な理由で非常に重要だ。
これを機会に自分にとっての適正空気圧を知り、コンディションによって微調整できるスキルを身につけよう。
なお、日常の空気圧管理には空気圧計付きのフロアポンプが必須。
Bontragerでは初心者でも扱いやすいシンプルなモデルから、チューブレスでのビード上げに役立つ加圧チャンバーつきの最上位モデルまで揃っている。フロアポンプは毎日使うものだけに、しっかりしたものを1本持っておきたい。
Bontrager TLR Flash Charger Floor Pump
チューブレスでのビード上げに役立つ加圧チャンバー付きフロアポンプ。デジタル空気圧計で細かい空気圧調整も容易。充実した機能を誇るハイエンドモデル。
Bontrager Dual Charger Floor Pump
モード切替によって、ロードバイクの高い空気圧のタイヤだけでなく、グラベルロードやマウンテンバイクの太くエアボリュームのあるタイヤも楽に空気を入れられる。
Bontrager Charger Floor Pump
大きな表示で見やすい空気圧計、仏式、米式、英式の3タイプに対応する口金「オートセレクトヘッド」など、必要十分な機能を備えたベーシックモデル。