「あなたは私のヒーローです」 トレック社長 ジョン・バークが語る、彼の憧れのヒーローとのストーリー

「あなたは私のヒーローです」 トレック社長 ジョン・バークが語る、彼の憧れのヒーローとのストーリー

ディアブロ山州立公園|カリフォルニア州ウォルナットクリーク

今日2021年4月22日、私はひとりの偉大なヒーローの物語を書き残しておきたい。

2017年12月19日、北カリフォルニアのジョー・シャミという名のライダーからメールが届いた。結論から言うとジョーは並大抵の人間ではなかった。彼は2003年にトレックのProject Oneを購入し、自慢のバイクで496週連続でディアブロ山を上ったと説明してくれた。彼は83歳だった。

ディアブロ山はベイエリアの有名な上りで全長20km、標高差は1110mある。最も急な区間の400mは10.5%の勾配と大変な坂だ。私は感激してジョーにお祝いの手紙を送った。マーケティング担当者を派遣するので、彼と一緒にディアブロ山の歴史的な500回目の登頂を記録してもらえないかと頼んだ。ジョーは2018年1月14日に500回目のディアブロ山登頂を果たした。

長年にわたり、ジョーとは40通以上のメールをやり取りをした。ジョーは自分のライド状況やバイクの状態、コンディションを逐一報告してくれた。サドルの痛み、白内障の手術、彼はあらゆることをつぶさに伝えてくれた。

2020年8月4日、私はジョーからディアブロ山の連続記録が11年43週目、つまり615週で終わったという知らせを受けた。1回のライドで2度のパンクに見舞われ、そのライドを諦めなければならなかったのだ。しかし、彼にはまだ大きな目標があることを知らせてくれた。

「このトレックのバイクで10万マイル(約16万km)走破を目指しています」と彼は言った。

私は返信した。「ジョー、もしあなたが10万マイル(約16万km)を達成したら、e-ロードバイクをプレゼントします」

ジョーはその提案を気に入り、目標への近況を送ってくれた。私はジョーに伝えた。「いつも連絡をありがとう。あなたは私のヒーローです。土曜日に、妻と一緒に3459mを上りました。コロナ禍が収束したら、ぜひトレックに遊びに来てください。あなたをゲストとして、ぜひお迎えしたいです」

2003年製のトレックロードバイクとジョー・シャミ

ジョーはその後もバイクに乗り続け、今年の1月31日に次のような近況報告を送ってくれた。「1月の嵐とサドルの痛みのため、1月の850マイル(約1,300km)は昨年12月の記録949マイル(約1,500km)よりも少ない」。

3月、私はジョーにいつゴールできるか尋ねた。3月3日に彼はこう答えた。「もう少しすれば正確な完走日を教えられると思うが、8月4日の87歳の誕生日までに10万マイル(約16万km)を達成したいのは確かだ」。

私は3月31日にジョーに連絡した。「ジョー、いつも近況を教えてくれてありがとう。あなたは素晴らしい方で、私も見習いたいです。ただ、自分の体を大切にしてくださいね。10万マイル(約16万km)を達成するための締め切りなどありません。その夢のような日がいつになりそうか、教えてください。私はそこにいるつもりです」。ジョーと私のアシスタントのシンディは、ついにその日を決めた。今月の初め、4月6日にジョーは「6月か7月に日程を決めてほしい」と連絡してきた。

それが、ジョーからの最後の連絡となった。

水曜日の朝、仕事をしていると北カリフォルニアからメールが届いた。それは、ジョー・シャミがラウンドアバウトを走行中に車に轢かれて亡くなったことを伝える内容だった。私はその連絡を2度読み、何度か電話をかけて確かめ、そして泣いた。私はジョーに会ったことはないが、幸運にも5、6回電話で話す機会があった。

彼は私のメール友達であり、そして私のヒーローだった。

ジョーは500週連続で日曜日にディアブロ山を上り切った

私はジョーとの歴史的なライドを楽しみにしていた。トレックのProject Oneに乗ってディアブロ山を上り、山頂でジョーは10万マイル(約16万km)を達成する。頂上でケーキを食べて、お祝いのパーティーをしよう。そして私は、トレックのデザイナーがデザインしたクールなProject Oneのe-ロードバイクをジョーに渡すのだ。私はジョーが亡くなる前日にデザインを承認していた。

みんなでいろんな話をして、みんながジョーと写真を撮りたがり、一緒に坂を下る。夕食を共にし、私はジョーに「あなたは私のヒーローです」と告げ、さよならを言う。その後も私たちは連絡を取り合い、彼はその新しいe-bikeの乗り心地をたっぷりと伝えてくれるのだ。ウォータールーまで飛んできて、トレックを訪ねてくれる。そして私たちは親友になる。この映画は、こんなふうに終わるはずだった。

ジョー・シャミのためにデザインされた、カスタム Domane+ LT eロードバイク ※Domane + LTは日本未展開モデル

私は次の土曜にサンフランシスコ近郊に向かい、ジョーを偲んで彼の友人たちとディアブロ山を上る予定だ。私たちは、こんなことを話す。ジョーがどんなにすばらしい人だったか。どれほどバイク界の英雄だったか。ジョーが毎年ディアブロ山を走る10万人のサイクリストのため、どれだけバイクの安全に貢献してくれていたか。そしてこの国のすべての人が安全にバイクに乗れるようにするため、私たちにできることは何か。

1971年、オランダでは自動車による死者が3,300人にのぼり、そのうち500人が子供だった。オランダはこの悲劇を失くすため、歩行者やライダーを守るための交通手段を決定した。現在のオランダでは、20%以上の移動が自転車で行われているが、アメリカではわずか1%だ。オランダでの自動車による死亡者数は1975年には米国より20%多かったが、2008年には米国より60%少なくなった。

ジョーを称えるため、ディアブロ山を、カリフォルニアを、アメリカを、そして世界中の山を上るサイクリングをより安全にするために私たちができることについて話し合うのだ。ジョーは先週、自分の大好きなバイクに乗っている最中に亡くなった。しかし彼は長く人の記憶に残ることだろう。そして彼の素晴らしい人生は、彼が誇らしく思えるような変化を導き、世界をより良い場所に変えるだろう。私にはそんな予感がしてならない。

晴れた日のウィスコンシン州ウォータールーにあるトレック本社外観

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この記事を書いた人: John Burke

John Burke has worn a lot of hats at Trek Bicycle since his first job packing parts when he was in high school. He's been the president of the company since 1997. He's the author of three books: PRESIDENTIAL PLAYBOOK 2020; 12 SIMPLE SOLUTIONS TO SAVE AMERICA; and ONE LAST GREAT THING, a memoir about his father, the founder of Trek. He and his wife, Tania, the CEO of Trek Travel, live in Madison, Wisconsin.