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Great Ride Series: ティム・アトキンソン

Great Ride Series: ティム・アトキンソン

想像を絶する喪失から前に進もうとする、とあるライダーのストーリー。

浜辺で独りで目覚めた彼は、後に左腕を失うこととなる大怪我を負っていた。

彼はヨットのデッキで高圧電線に触れたのだった。彼はあまり運が良くなかった。電流を受けて気を失い、デッキから岸に落ちたのだ。仲間が彼の元へと泳ぎ、蘇生させてから助けを呼びに行った。

いま浜辺にいる17歳のティム・アトキンソンは生まれ変わろうとしていた。彼はそれでもティーンであるのは確かだが、事情はそれまでと違う。

数ヶ月後、大学生となる頃には、事故は彼に新たな人生を与え、そして新たなニックネームも手に入れた。兄弟が彼の姿をスロットマシンの「ザ・バンディット」ようだと呼び始めたのだ。ティムは大学で、一流のアルペンスキーレーサーとしてのキャリアに成功した。

修士課程で経済を学んだ彼は、コロラド州ウィンターパークにある全米障がい者スポーツセンターで、競争率の高いコーチ職となるチャンスを得た。後の彼の人生で、娘のハンナが出場するスペシャルオリンピックスのスキーとサイクリングチームで、コーチを務めることになる役職だ。

彼はロースクール時代に、高校時代からの恋人と結婚した。4人の子供を育てた。キャリアは発展していった。腕を失ったからといって、好きだったことを諦めることは決してなかったが、別のアプローチで挑む必要があった。そして時には、好きなものを彼に合わせる必要があった。

ロードバイクの場合、普通はフロントディレーラーをハンドルバー左側にあるレバーで操作する。しかし、ティムでも使える代わりの製品は、販売されていなかった。彼はトレックのデザイナーチームと協力して、右手だけですべての操作を行えるロードバイクを作った。そのバイクに彼はこう名付けた。ザ・バンディット。

ティムはそのカスタムバイクで幾度となく冒険に出かけた。そしてそれは、ウィスコンシン横断ライドから、コロラド・ロッキー山脈の主な3つの頂上を通るトリプル・バイパスへ行く日々のルートまで。

そこから、全米各地で出会った人々、トレックのスタッフとの、いつまでも続く友情が築かれた。ティムとザ・バンディットは毎夏、小児ガンへの基金を募る年に1度のチャリティーライド、Trek 100に出場する。トレックのエンジニアは、彼とバイクを見るたびに喜ぶ。「彼らの仕事は他とは異なる」と、ティム。「ザ・バンディットが彼らにそれを思い出させるんだろうね」。そう、その通りだ。

個人的な物が記憶に残る瞬間を刻むことがある。手紙、写真、宝石。私たちがそれを取っておくのは、その瞬間や一緒に共有した人々のことを思い出させてくれるからである。

ティムとトレックの仲間がザ・バンディットを作ってから5年後、ティムの人生に想像できないほど辛い出来事が訪れる。知らせを受けた時、彼と妻はコロラドの自宅にいた。22歳の息子のジェフが、ニュージーランドでバックカントリースキー中に事故に遭い、命を落とした。

同じ苦難に直面したことがある人は、慰めになるものなどないと言う。

「ザ・バンディットでトレーナーに乗っていたら、涙が流れ、嗚咽が込み上げてきた」と、ティムは書いたことがある。「バイクはトレーナーに固定されたまま。この悲劇からはペダルを漕いで逃れることはできないという、過酷な現実に対するメタファーのように思えた」。

自転車は物に過ぎないが、それ以上の可能性を秘めている。変化を生む乗り物であり、自由をもたらす物なのだ。そして時に、癒しを与えてくれる。「自転車に乗っても、現実を隠すことができるわけじゃない」と、ティムは言う。「むしろ、よりはっきり焦点が当たる。良いことにも悪いことにも。世界への窓は常に開かれていて、景色、音、匂いに触れられるんだ」。

自転車は、ティムに息子を思い出させる。彼はその出来事を隠すのではなく、受け入れることにした。その後、ザ・バンディット 2.0となって完成した。「最初のバンディットから、とても多くの会話が生まれたから、2台目もそうなって欲しかった」と、ティム。「このバイクに伝えて欲しかったストーリー、もっと正しく言えば、それに乗っていたときに僕が伝えたかったストーリーに目を向けたんだ」。

彼はまたしてもトレックのエンジニアやProject Oneのデザイナーと協力し、今回はアート面に大きな重要性を持たせるために、彼らを頼った。フレームのカラーには、命を落としたジェフが最期の旅をしたニュージーランドの青々と茂る森のイメージを選んだ。フォークには、ロイマタと呼ばれるマオリ族の装飾が描かれている。ティムはライドのたびにそのお守りを首に着けており、これはニュージーランドのジェフの友達が彫り、司祭が浄めたものだ。

そしてバイクの至るところに、悲劇の後に進むべき方向へと矢印が施されている。

「喪失から立ち直るためのバイク」だと、ティムは言う。「この世界を再びつなぎ合わせるためのものなんだ。息子が毎朝目覚めた時に見た世界、すなわち雪を被った山々や周囲の草地。彼が写真に収めた世界。彼がありふれた仕事に縛られていた日々に思いを馳せていた世界のことさ」。

About the Author: Trek

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