マウンテンバイクとは?
マウンテンバイク(以下MTB)とは、山道などの未舗装路を走るのに適した自転車。
1970年代にアメリカ西海岸で生まれたのが起源と言われている(諸説あり)。パーツやフレームの進化により、石や岩がゴロゴロと転がる路面や泥でぬかるんだ場所など、コースやシチュエーションに合わせたバイクが増え、それらはカテゴリーとして確立されている。
様々なMTBの種類
特殊なものを除けば、大きく分けて5つ。軽量かつ未舗装路の登りに強いバイクから、下り坂に適したバイクを並べると以下の通りとなる。
- クロスカントリー
- ダウンカントリー
- トレイル
- エンデューロ
- ダウンヒル
これらのバイクは、走る場所やライダーの走り方に応じて変化を遂げてきた。
レースバイクから派生して生まれたものや、レクリエーションベースのものなど様々だが、走るフィールドにマッチしないバイクを使用するとスペックが足りなかったり、逆に持て余したりしてしまうこともある。
最新のMTBを最大限に活用するためには、自身がどのようなフィールドで多くの時間を過ごすのかを知り、それに最適なモデルを理解することが重要だ。
クロスカントリーバイク
クロスカントリーバイク(XCバイク)と呼ばれるバイクは、その名を冠した「クロスカントリーレース」に最適なバイクのことを指す。
MTBの中でも、登坂力や平地での巡航力を優先して設計されている。
MTBの剛性や快適性は、重量とのトレードオフになることが多いが、XCバイクはより軽量で、サスペンションのストローク量(サスペンションの長さ)も短めに設定されている。最新のXCバイクでは前後100mm程のサスペンションが主流で、フロントサスペンションのみを備える「ハードテイル」と呼ばれるバイクが選ばれるケースも少なくない。これは後部のサスペンションがないことにより、軽量化が図れるためだ。
そのサスペンションの角度も、MTBのキャラクターを決める重要なポイントとなる。この角度は自転車本体のヘッドチューブ角(ヘッドアングル)によって決定されるが、地面に対して垂直に近ければハンドル操作が機敏に、角度がつけばより走破性が高くなる。クロスカントリーバイクの70°近いヘッドアングルは、鋭角なターンや、登りなど低速域でのハンドリングで真価を発揮できるよう、ヘッドチューブの角度が立っているのも特徴だ。
クロスカントリーバイクの特徴
・軽量で推進力に優れている
・ストローク量が前後100mm
・ヘッドチューブの角度が70°前後で機敏な操作性
TREKのクロスカントリーバイク
Procaliber(プロキャリバー)
Procaliberはハードテイルのレーシングバイク。
軽量なカーボンフレームに、TREK独自の振動吸収テクノロジー “IsoSpeed” を備える。これはフレームの一部を分離させる特殊な機構で、路面からの振動を吸収する構造となっている。これにより、ハードテイルバイクとしての操作性や軽量性を保ちつつ、疲労感を抑える設計となっている。
Supercaliber(スーパーキャリバー)
フルサスペンションモデルの「Supercaliber」には、 ”IsoStrut” と呼ばれる60mmのリアサスペンションが搭載されている。
フレームと一体型の美しいフォルムに加えて、自転車全体で約9.7kg(Supercalbier9.9/Mサイズの場合)を下回る軽さを実現し、ワールドカップや世界選手権など、世界中のビッグレースで実績を残しているレースバイク。東京五輪の女子クロスカントリーでも、スイス人選手ヨランダ・ネフがSupercaliberとともに金メダルを獲得している。
ダウンカントリーバイク
「ダウンカウントリーバイク」は、MTBの中でも比較的新しいジャンルだ。
この言葉を聞き慣れない方だと、クロスカントリーバイクとダウンヒルバイク(後述)の中間というイメージを抱くかもしれない。しかし、実際にはクロスカントリーバイクのDNAをより強く受け継いだ「登りに強く、下りも楽しめるマシン」というコンセプトを持つ。
世の中の多くのトレイルがそうであるように、下りを楽しむためには坂道を登る必要がある。登坂性能に優れたクロスカントリーバイクに近いフレーム設計に、少しゆとりを持って走れるようヘッドアングルは67°前後、サスペンションのストロークも120mmに延長されている。急な登り下りを伴うトレイルライドで真価を発揮するため、日本のトレイルライドにも向いたカテゴリーと言える。
ダウンカントリーバイクの特徴
・クロスカントリーバイクの登坂力を残しつつ、下り性能を伸ばしたバイク
・ヘッドチューブ角は67°前後
・サスペンションストロークは120mm前後
TREKのダウンカントリーバイク
Top Fuel(トップフューエル)
長年、レース向けのフルサスペンションのクロスカントリーバイクとしてTREKのラインナップを支えた「Top Fuel」が、2022年のモデルチェンジでダウンカントリーバイクとして生まれ変わった。
前後120mmのサスペンションに2.4インチ幅のタイヤを標準で装備。
フレームにはジオメトリー(フレームの寸法)を調整できる“Mino Link” を搭載。フレーム内蔵のストレージなども標準で搭載され、自走を伴うトレイルライドを楽しみたいライダーや、レースも遊びも1台でこなしたい日本のライダーに合ったバイクとなっている。
トレイルバイク
野山を駆け、コーナーをハイスピードで曲がり、時にはジャンプをこなし、登りをぐいぐいと登る。そんな現代のMTBの中心ともいえるのが「トレイルバイク」。
トレイルバイクはクロスカントリーバイクよりもリラックスした乗車姿勢で、スピード感のある下りやジャンプに適しており、まさに”楽しむためのバイク”。MTBにおいてポピュラーなカテゴリーとも言える。
ホイールサイズは27.5、または29インチの選択肢があり、サスペンションはフロントが140〜150mm、リアが120〜140mmが設定される場合が多い。元々はサスペンションのストローク長に選択肢があったが、他のジャンルが確立してきたことにより設定の幅が狭まっている。一方、ヘッドアングル角の幅は比較的広い。66°のものが代表的ではあるが、より寝かせて下りに振ったトレイルバイクも存在し、乗り手のスタイルに応じて選択ができる。MTBの選択肢で迷った場合は、まずトレイルバイクから検討すると良いだろう。
トレイルバイクの特徴
・最もポピュラーなカテゴリー
・サスペンションはフロントが140mm〜150mm、リアが120〜140mm
・ヘッドアングル角は66°、もしくはそれ以下
TREKのトレイルバイク
Fuel EX(フューエルEX)
TREKでは「Fuel EX」がトレイルバイクに該当する。
フロント140mm / リア130mmのサスペンションに、ヘッドアングル角は66°。
シングルトラックでは速く、荒れたセクションでは走破性が高く、どこを走っても楽しいバイクと言える。競技者・映像クリエイターとしてトップに君臨するプロ選手、ブランドン・セメナックもこのFuel EXを駆り、鮮烈でオリジナリティの高いジャンプとトリックを披露している。
あなたの技術次第では、このバイクに跨って世界を魅了するライディングをすることも可能だ。
エンデューロバイク
エンデューロバイクは、エンデューロレースのためのバイクとして誕生した。エンデューロレースとは、下りのタイムを競いながら、下りと下りの間(リエゾン)区間の登りもこなす競技だ。
エンデューロバイクは、下りを最速で駆け抜け、登りもこなせるよう緻密に設計が施されている。自走でトレイルを登って下れるMTBの中では、一番アグレッシブな走りが期待できる(クロスカントリーやダウンカントリーには登坂性能で劣るが)。
日々のトレイルライドでとにかく下りに特化したバイクが欲しい方や初心者で安心感のある走りを求めている方にはエンデューロバイクが最適だ。また、富士見パノラマなど、リフトのあるMTBパークでのダウンヒルに使いたいユーザーにも最適な選択肢になるだろう。
また、ホイールサイズは27.5と29インチ、更に前後異径の”マレット(フロント29、リア27.5インチ)”と呼ばれるホイールサイズが展開されている。
サスペンションは前後とも150〜180mmと長く、ヘッドアングルも65〜63°とかなり角度のついた設定のものがほとんどだ。これら特徴のおかげで前後ホイール間の長さ(ホイールベース)はとても広く、凸凹や障害物も難なく走り切ることができる。
エンデューロバイクの特徴
・下り性能に優れたバイク
・サスペンションストロークは150〜180mm
・ヘッドアングルは65〜63°と寝たものが多い
・マレットに対応している
TREKのエンデューロバイク
Slash(スラッシュ)
64.1°のヘッドアングル、前170mm・後160mmのサスペンションに、標準で29インチ(ホイール径) x 2.5(幅)と、取り付けられる最大サイズのタイヤを備えた「Slash」がTREKのエンデューロバイク。
上位モデルはプロチーム 「TREK Factory Racing Enduro」 の選手たちがレースで使用するものと同じ製品となり、カーボンのフレーム、フレームプロテクション、オーバーサイズのシートポストなど、即レース仕様のバイクに。
エンデューロレーサー、または激しいトレイルを攻める勇敢なライダーにオススメしたい1台だ。
ダウンヒルバイク
クロスカントリーバイクやエンデューロバイクと同じく、ダウンヒルバイクもレースから生まれた。
ネーミングの通り下ることのみを追求しており、登ることを想定していない。
ダウンヒルバイクは前後200mmのサスペンションに、ヘッドアングル角は63°を下回る徹底ぶり。実際にダウンヒルバイクに跨ると、オートバイのような重厚さを感じることができるだろう。競技志向の強いジャンルではあるが、数々のトレンドが作られてきた背景もある。当初のダウンヒルバイクは今のダウンカントリーバイクにも満たないスペックだったが、速さを求めるライダーたちによってそのスペックは押し広げられた。
これによってトレイルやエンデューロといったジャンルも生まれることとなった。
※TREKのダウンヒルバイクSessionは日本未展開
ダウンヒルバイクの特徴
・下ることに特化したバイク
・前後200mmの長いサスペンション
・下りに適した66°のヘッドアングル角