マウンテンバイクの秘密
ゴツゴツしてボリューム感のあるタイヤ、無骨な外観のサスペンション、肉厚そうなフレーム。街中で見かける「マウンテンバイク」は、ひと目でそれとわかる雰囲気をまとっている。何気ない信号待ちでも一際目立つ佇まいだが、なにも見栄えのためだけではない。主に荒れた道や自然の中を走るために、必要な進化を果たしてきたのだ。
マウンテンバイクが真価を発揮する場所は自然の中。それゆえこの乗り物がダイナミックに走る姿を目にする機会は多くない。
本記事では、マウンテンバイクについて、そしてその用途や、初心者におすすめのマウンテンバイクをご紹介していく。
マウンテンバイクとは?
マウンテンバイクとは、その名の通り山道を走る自転車。
オフロード(未舗装路)を走ることに特化し、自然の山中で整備されたコースを楽しむ「トレイルライド」や、速さを競う「ダウンヒル」や「クロスカントリー」、技を競う「ダートジャンプ」など、遊び方は様々だ。
軍用や運搬用などその起源については諸説あるが、現代のように山を駆け回る自転車として開発されたのは1970年代、アメリカ・カリフォルニア州の登山道をビーチクルーザーをベースとした自転車で下ったことが起源とされている。
マウンテンバイクの特徴
マウンテンバイクは重量感のある見た目が特徴的である。用途によってもホイールサイズやサスペンションの長さ、フレーム形状も多種多様である。
- 太くて凹凸のあるタイヤ(ブロックタイヤ)を装備
- さまざまな路面状況に対応した大きなギアを搭載
- 用途に合わせた豊富なホイールサイズ(26〜29インチ)とバイクの種類
- 衝撃を吸収するためのサスペンションを搭載
マウンテンバイクの用途
マウンテンバイクは、山中でのライドやレースはもちろん、荷物の運搬などにも適したバイクとも言える。
- トレイルライド…走りやすいように整備された山中のオフロード(山道)を下ったり、林道を走って自然を楽しむ
- 競技…特設されたオフロードの周回コースで順位を競ったり、山道での下りの速さを競うなど種目は様々
- バイクパッキング…ラックを装着し、キャンプやツーリングにも
- 街乗り…頑丈な作りや耐久性を活かした荷物の運搬や、太めのタイヤでパンクのリスクが低いため通勤通学に最適
マウンテンバイクの種類
前述した通り、マウンテンバイクは競技や用途によって、使用するバイクの種類が以下のように変わってくる。
では、マウンテンバイクにはどのような違いがあるのか?大まかに分けると以下の3つだ。
- サスペンションの数
- サスペンションの長さ
- ホイールサイズ
サスペンションの数(ハードテールとフルサスペンション)
マウンテンバイクは、「ハードテール」と「フルサスペンション」の2種類に分けることができる。
車体のフォーク(フレームと前輪を繋ぐパーツ)のみに搭載されているのものをハードテール、フレームの後方にも搭載されているものをフルサスペンションと呼ぶ。
ハードテールは比較的価格が低く、高い登坂性能を備えているため、難易度の低い林道などには最適。本格的なトレイルやジャンプを要する場所ではテクニックが必要なため初心者にとっては難しい面もある。
一方、フルサスペンションのバイクはオフロードでの性能には文句なしだが、比較的価格が高い。バイクの性能だけで見ると初心者におすすめできるが、近所の河川敷や難易度の低い裏山を走ると言ったシチュエーションでは、オーバースペックとなるだろう。
サスペンションの長さ(トラベル量)
サスペンションの長さを指す「トラベル量(別名ストローク)」も、バイクの種類によって変わる。
登坂シチュエーションの多いクロスカントリーバイクやエントリー向けのハードテールには、100〜120mm。エンデューロバイクやダウンヒルバイクなどの場合は140〜200m。トラベル量が長ければ長いほど、より下りに特化したバイクとなる。
自走でトレイルを楽しむ場合や、近所の裏山を走る場面が多い方は、コースの荒れ具合や難易度にもよるが、短め(120mmくらいがベスト)が良いだろう。
ホイールサイズ
マウンテンバイクのホイールサイズは、26インチ、27.5インチ、29インチの3つが主なサイズだ。
現在は29インチが主流だが、TREKでは小さめのフレームサイズには、27.5インチや26インチが標準搭載されている。
ダウンヒルレースでは、フロントに走破性の高い29インチ、リアに小回りの利く27.5インチを装着することもある。これは「マレット」と呼ばれる。
初心者にもおすすめのマウンテンバイクって?
では、初めてのマウンテンバイクにはどのようなモデルを選ぶべきだろうか。今回はTREKの入門用マウンテンバイク3モデルを比較して解説しよう。
バイクを選ぶ前に
初心者が、1人でいきなりオフロードのフィールドに向かうのは危険だ。ハイカーや地権者とのトラブル、また怪我のリスクも高くなるだろう。
そんなあなたをサポートしてくれるのがプロショップの存在だ。
安全に走れる場所や、一緒に走る仲間を紹介してくれるかもしれない。良いお店を見つけることが、良いマウンテンバイクライフを作るポイントとなる。
なるべく低予算からスタートしたい:Marlin(マーリン)
新たな自転車を迎え入れる瞬間は、いつだってワクワクする。とはいえ「本当に長続きするだろうか」という不安な気持ちも同時に湧いてくる。何かに特化したモデルは快適に走れるフィールドが限られていることが多いため、初心者の方はなるべくオールラウンドなモデルで、自分に合ったフィールドを探るのが良いだろう。
「Marlin」は、手軽にマウンテンバイクを始められるシリーズ。
フレームに頑丈なアルミニウム素材を採用し、パーツの選択肢により6・7・8の3つのグレードが用意されている。カラー展開も豊富であり、スポーツバイクを初めて手にする方にもおすすめ。
また、荷物を搭載するためのラックや、駐輪のためのキックスタンドの、街乗りや通勤通学と言った用途にも対応した機能を備えている。
遊びもこなしたい:X-Caliber(エクスカリバー)
「X-caliber」は、プロ選手のようなアグレッシブな走りに必要なバイクの要素を、初心者向けに改良したモデルだ。
激しい登りと下りが多いクロスカントリーレースで培われたノウハウを活かし、これからクロスカントリーレースに参加しようと考えている方、トレイルでも登りの多い登山道を走る予定の方はこのモデルがマッチするだろう。
用途的には前者のMarlinとほぼ同じだが、ドロッパーシートポストを始めとする、より高度な走りに対応したパーツを搭載するなど、X-CaliberはMarlinの上位互換的な位置付けと考えると分かりやすいだろう。
とにかく山を駆け回りたい!:Roscoe(ロスコー)
レースよりもとにかく山を駆け回り、思う存分マウンテンバイクを楽しみたい。フルサスペンションを買う余裕はないけど、トレイルで遊べるのバイクが欲しい。そんな方におすすめなのが「Roscoe」だ。
野山をダイナミックに走り抜けるライディング、下りでの大きなアクションをサポートしてくれるパーツを搭載。140mmのトラベル量を備えたサスペンション、障害物をものともしない29インチホイール、安定性を考慮したフレーム設計、そして全てのグレードで採用されるドロッパーポスト(サドルをワンタッチで上下させられる機構)など、テクニックを要する走りに最適だ。
マウンテンバイカーになろう!
近年のマウンテンバイクは、ユーザーニーズが組み込まれ、使いやすい機材が沢山生み出されてきた。
幅広い用途やジャンル、遊び方が存在し、ロードバイクとは全く別の乗り物と言っても過言ではないマウンテンバイク。
さぁ、今すぐ玄関を飛び出し走りに行こう。