高性能のフレーム
OCLVカーボンは、トレックのバイクを語る上で外せないワードだ。航空宇宙産業の技術を用いて開発されたこのフレーム製法は最高の性能を誇る。
トレックのカーボンバイクの歴史を辿ってみよう。1989年にトレック初のフルカーボンバイク「5000」が登場した。
92年には元航空宇宙エンジニアだった2人の社員がOCLV製法を用いた「OCLVカーボン」のフレームを開発して以降、日々進化を遂げている。
97年、トレックは世界最高峰のロードレース「ツール・ド・フランス」を走るチームにバイクを供給し、同大会をフルカーボンフレームで出場した初のチームとなった。
2003年には、現在でもトレックの主力ロードバイクである「Madone(マドン)」が登場。数多くの勝利を挙げ、今日の最先端バイクの開発に貢献している。
OCLVとは
OCLVとはOptimum Compaction Low Void(超高密度圧縮、低空隙)の略。トレックが誇る最軽量で最高の強度を誇るカーボンだ。
Optimum Compaction(超高密度圧縮)とは、繊維とレジンとが理想的な割合となるよう熱と圧力とを交えつつ、複数のカーボンシートを組み合わせる技術。
Low Void(低空隙)とは、カーボンファイバーの層間に存在する空間のことである。これら空隙を最小限に抑えることが、高品質のカーボン製作で最重要だ。
妥協のないアルミフレーム
トレックの歴史と共に進化してきたアルミフレームも同様だ。
ハイドロフォーミングと呼ばれる技術でアルミフレームを形成するアルミチューブを型にはめ、内側に液体を注入することで設計に応じた理想の形状に成形する技術を用いて高い強度、空力性能、軽量性を備えたアルミフレームを製造している。
現在トレックのアルミフレームは、エントリー〜ミドルグレードのバイクに採用されており、カーボンのハイエンドバイクに引けを取らない性能を備えている。
トレック独自の製品
トレックのバイクには、前述した高いフレーム製法だけでなく数多くの独自技術を開発し、性能と品質を高めてきた。
レースでプロ選手たちが勝利を挙げるためだけでなく、現場で培われたフィードバックが製品へと反映され、ホビーサイクリストたちでも快適かつ高い性能とユーザー体験ができるようになっている。
IsoSpeed(アイソスピード)
IsoSpeedとはフレームの一部をしならせ、路面からの振動を吸収することで長時間走行による疲労を抑えるトレック独自の技術。
IsoSpeedはフレームの一部が本体が切り離され、振動が生じた際に垂直方向にしなることで作用する。
IsoFlow(アイソフロー)
2023年の第7世代Madone SLRに搭載されている最新テクノロジー。
前作のMadoneに搭載されていた調節式IsoSpeedを撤廃し、新たにIsoFlowを開発。シートチューブに穴を開けることで軽量化と空力性能の大幅な向上に貢献。
IsoStrut(アイソストラウト)
トレック独自の技術が搭載されているのは、もちろんロードバイクだけではない。
マウンテンバイクのSupercaliberに搭載されているIsoStrutは、フレームと一体化したリアショック。
通常のリアサスペンション搭載のフレームとは異なり、IsoStrutがフレームの一部であることから余分なパーツは不要であり、軽量化を実現している。
安全に楽しむために
トレックにはフレームの他にも、バイクでの製造技術や空力性能を取り入れたヘルメットやホイールなど、高いパフォーマンスを発揮するための豊富なパーツ/アクセサリーがある。
しかし、求めるのはパフォーマンスだけではない。
自転車を楽しむために必要な“安全”にもフォーカスし、サイクリストにとって最適なアイテムを多く開発している。
トレックは大学や専門機関と協力し、交通事故の原因を分析。交通事故の8割は日中に起こることから、被視認性を高めるための日中点灯用のライト(デイライト)を開発。
その名の通り、日中での点灯にも最適なライトであり、2km先からでも見える明るさや独特の点滅パターンなどを通じて交通事故削減のために意欲的に取り組んでいる。
Giulio Ciccone e Letizia Paternoster Photo credits: @samneedham
日中点灯用のライトの他にも、Hi-Visと呼ばれる蛍光色のウェアも製造しており、安全のためには妥協しない。
Trek-Segafredoらプロチームの選手たちは、トレーニング用のジャージにHi-Visを着用しており、デイライトと共にレースに出場することも。
幅広い人々へ
当時はブルーオーシャンであった、アメリカ国内で高品質なバイクメーカーを目指すという目標を超え、レースで勝つために人々の生活や地球に役立つためのバイクなど高い技術が用いられている。